書評 book review 「TV」 2007 4 30
書 名 テレビは日本人を「バカ」にしたか?
大宅壮一と「一億総白痴化」の時代
著 者 北村 充史
出版社 平凡社新書
最近の低俗なテレビ番組を批判する時に、
よく使われる有名な台詞、
「日本人、一億が総白痴となりかねない」という言葉について、
「テレビの歴史」という視点から論じた本です。
この本で興味深いのは、若き日の田中角栄郵政大臣が登場することです。
「低俗番組追放と放送法の改正」というところで、
田中角栄郵政大臣の発言が出てきます。
(以下引用)
「最近巷間にテレビジョンは、
一億総白痴化するものであるなどと言われているのは、全く遺憾でありまして、
わたくしは、テレビジョン放送局の予備免許をいたした際にも、
じゅうぶん、この点に留意し、各放送会社に対し、
番組の編成にあたっては、娯楽に偏重しないように、
教育教養をも、じゅうぶん考慮すべきことを要望した次第であります」
(「キネマ旬報『テレビ大鑑』に寄せる」)
「商業放送に対しては、全放送の三十パーセントを、
教育・教養番組にあてるよう条件をつける。
娯楽や青少年番組は午後十時までに終わらせる。
これらを守るべく、各放送局は自主的に放送番組審議会を設けるべきだ」
朝日新聞 昭和三十二年八月二十一日付
「一億総白痴化」の元凶である低俗番組、俗悪番組をなくして、
青少年を保護すべきというのが行政のもうひとつの課題だった。
(以上引用)。
テレビ局 TV station 2005 3 28
今まで、テレビ局を批判してきましたが、
私の願いは、ただ、ひとつです。
「テレビ局は、放送法を遵守してほしい」。
今のテレビ局は、特に、下記の「四」と「五」に問題があります。
放送法によって、放送番組の編集にあたり、留意すべきことがあります。
一、公安および善良な風俗を害しないこと。
二、政治的に公平であること。
三、報道は、真実をまげないで行うこと。
四、意見の対立している問題については、多角的に論点を明らかにすること。
五、教養、教育、報道、娯楽の四種類の番組について、調和を保つこと。
表現の自由 freedom of expression 2003 11 20
憲法によって保障される「表現の自由」には、「放送の自由」が含まれます。
しかし、この「放送の自由」には、
新聞や雑誌などの活字メディアにはない「特別な規制」があります。
つまり、新聞や雑誌などの「表現の自由」より、
放送の「表現の自由」は、狭いと考えられます。
このような特別な規制があるのは、なぜか。
第一に、放送用電波は、有限であり、また公共性が高く、
特定の事業者に、電波の「排他的使用権」を認める制度となっていること(放送局の免許制)。
第二に、放送は、直接、家庭に入り込み、動画や音声を伴う点で、
他のメディアにない「強烈な影響力」を及ぼすこと。
第三に、テレビ番組は、スポンサーによって、時間単位で買われることになるので、
自由放任にすると、番組編成が、「大衆受け」をするような画一的なものになる恐れがあること。
「特別な規制」
(1)無線放送については、電波法によって、無線局の開設が、免許制によって規制されています。
(2)放送法によって、放送番組の編集にあたり、留意すべきことがあります。
一、公安および善良な風俗を害しないこと。
二、政治的に公平であること。
三、報道は、真実をまげないで行うこと。
四、意見の対立している問題については、多角的に論点を明らかにすること。
五、教養、教育、報道、娯楽の四種類の番組について、調和を保つこと。
(参考文献)
「憲法」 芦部信喜(著) 岩波書店
憲法の本は、名著が多いですが、
この本が一番、わかりやすく書かれていて、入門者向けだと思います。
一般の人が読む「憲法の本」として、最適だと思います。
憲法を学びたいと思ったら、この本から始めるとよいでしょう。